メローニ政権はなぜ誕生したのか ― 戦後イタリア政治の文脈から
2022年、イタリア初の女性首相としてジョルジャ・メローニが登場しました。メローニ率いる「イタリアの同胞(Fratelli d’Italia)」は、かつての極右とされる潮流を源流としています。
なぜ現代イタリアで、このような政権が支持を集めるに至ったのか。単なる「右傾化」という一言では片づけられない、その背景を探ってみます。
戦後イタリア政治の不安定さ
戦後のイタリアは「不安定な連立政権の連続」と言われています。キリスト教民主党を中心とする体制は長らく続きましたが、政党分裂や汚職事件によって政治への信頼は揺らぎ続けました。
冷戦期には共産党が強力な野党として存在したものの、政権には就けないという特殊な構造もあり、「誰が政権を担っても安定しない」という印象が、国民の間に定着していきました。
ポピュリズムの流れ
1990年代にベルルスコーニが登場すると、テレビを駆使したポピュリズムが新しい形で政治を席巻します。
その後も「五つ星運動」に代表される反エスタブリッシュメントの潮流が強まり、従来の政治エリートへの不信感が社会全体を覆いました。この流れの中で、メローニは「庶民の代表」としての語り口を磨き上げ、若い世代にも一定の支持を広げていったのです。
経済・移民・EU不信
メローニ政権誕生の直接的背景には、主として以下のような要因が考えられます。
- 長引く経済停滞
- 大量の移民流入に対する不安
- EUへの懐疑的な感情
とくに南欧の国境に位置するイタリアでは移民問題が日常的なテーマとなり、「国家のアイデンティティを守る」というメッセージが有権者に強く響いたのです。
過去の帰結としてのメローニ
こうして見ると、メローニの登場は「突発的な右傾化」ではなく、
戦後の政治不安定 → ポピュリズムの定着 → 経済・社会的困難
という長い文脈の上に生まれたものだと分かります。
つまり彼女の存在は、イタリア政治の「例外」ではなく「帰結」なのです。
結び
イタリアの未来を語る上で、メローニ政権の行方は避けて通れません。しかし同時に重要なのは、そこに至る歴史を理解することです。
「いま起きていること」を知るだけでなく、「なぜそれが起きたのか」を考えること。その視点こそが、現代イタリアを深く読み解く鍵になるでしょう。
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